2025年度上原記念生命科学財団 上原賞受賞者及び各種助成金受領者決定のお知らせ
公益財団法人上原記念生命科学財団(東京都豊島区、理事長:上原明)は、12月12日(金)に開催した理事会において、2025年度上原賞・各種助成金贈呈対象者を決定しましたのでお知らせいたします。
今年度の上原賞は2名、各種助成件数は335件、助成金総額(上原賞副賞を含む)は13億
985万円となりました。
■上原賞 2名 6,000万円 (副賞1件 3,000万円)※掲載は五十音順
○竹内 理氏 京都大学 大学院医学研究科 医化学分野 教授
対象となった研究業績
「mRNA分解による新規免疫制御機構の発⾒とその制御法の開発」
○中山 敬一氏 東京科学大学 総合研究院 高等研究府 特別栄誉教授
対象となった研究業績
「哺乳類における細胞周期制御機構の解明」
■各種助成金(上原賞以外) 335件 12億4,985万円

公益財団法人上原記念生命科学財団は、1985年の設立以来、今年度41年目となります。
2025年度までの生命科学に関する諸分野の研究に対する助成(上原賞含む)は約12,200件、
約398億円になります。
上原賞受賞者(五十音順)


受賞対象となった研究業績
「mRNA分解による新規免疫制御機構の発⾒とその制御法の開発」
mRNA分解による免疫制御機構を世界に先駆けて解明し、RNA制御を基盤とする新たな免疫学の潮流を創出した。炎症性サイトカインmRNAを分解する分子Regnase-1を発見し、Roquinとの時空間的制御原理を提示することで、従来の転写因子中心の枠組みを超えた免疫調節の新概念を確立した。さらに、Regnase-1の自己制御構造を標的とするアンチセンス核酸医薬を開発し、炎症性疾患モデルでの治療効果を実証した。RNA構造を標的とする新規モダリティの提唱は、免疫疾患治療やmRNA医薬の革新に直結するものである。また、ウイルスRNAを分解するN4BP1の発見や、mRNAのコドン使用偏りによる分解制御の解明など、RNA制御の新原理を次々と提示し、免疫学・分子生物学の両分野に革新をもたらしている。これらの成果は、核酸医薬、ワクチン開発、タンパク質製造技術などへの応用も期待される独創的な業績である。
上原賞受賞者(五十音順)


受賞対象となった研究業績
「哺乳類における細胞周期制御機構の解明」
哺乳類における細胞周期制御機構を解明し、身体サイズが細胞周期によって決定されること、さらにその異常が発がんの直接原因となることを世界で初めて実証した。特に、CDK阻害因子p27欠損マウスによる巨大化と自然発がんの発見は、細胞周期と腫瘍形成の因果関係を示す画期的成果である。さらに、p27の分解因子Skp2やがん抑制因子Fbxw7を同定し、がん幹細胞の静止期維持と治療抵抗性の分子基盤を明らかにした。Fbxw7を標的とした「静止期追い出し療法」は、がん根治への新たな戦略として注目されている。また、クロマチンリモデリング因子CHD8の機能不全が自閉症を引き起こすことを実証し、神経発達障害の分子病態解明にも貢献。さらに、全タンパク質の絶対定量を可能にするiMPAQT技術を開発し、がん代謝の弱点を明らかにするなど、生命科学と医療応用の両面で卓越した研究業績である。
<参考資料>【いままでの上原賞受賞者一覧】(敬称略、所属・役職は受賞時)
年度 受賞者 所属・役職
2024 神取 秀樹 名古屋工業大学大学院工学研究科特別教授
柚﨑 通介 慶應義塾大学医学部生理学教授
2023 岩坪 威 東京大学大学院医学系研究科教授
西川 博嘉 国立がん研究センター研究所腫瘍免疫分野長
2022 大野 博司 理化学研究所生命医科学研究センター副センター長
胡桃坂 仁志 東京大学定量生命科学研究所教授
2021 浦野 泰照 東京大学大学院薬学系研究科/大学院医学系研究科教授
岡野 栄之 慶應義塾大学医学部教授
2020 影山 龍一郎 京都大学ウイルス・再生医科学研究所教授
吉村 昭彦 慶應義塾大学医学部教授
2019 岩井 一宏 京都大学大学院医学研究科教授
斎藤 通紀 京都大学高等研究院教授
2018 佐々木 裕之 九州大学生体防御医学研究所主幹教授
高柳 広 東京大学大学院医学系研究科教授
2017 松本 邦弘 名古屋大学大学院理学研究科名誉教授
宮脇 敦史 理化学研究所脳科学総合研究センター副センター長
2016 一條 秀憲 東京大学大学院薬学系研究科教授
小川 誠司 京都大学大学院医学研究科教授(共同受賞)
宮野 悟 東京大学医科学研究所教授(共同受賞)
2015 豊島 近 東京大学分子細胞生物学研究所教授
水島 昇 東京大学大学院医学系研究科教授(共同受賞)
吉森 保 大阪大学大学院生命機能研究科・医学系研究科 大阪大学特別教授(共同受賞)
2014 狩野 方伸 東京大学大学院医学系研究科教授
2013 笹井 芳樹 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長
濡木 理 東京大学大学院理学系研究科教授
2012 竹縄 忠臣 神戸大学大学院医学研究科特命教授・質量分析総合センター長
渡邊 嘉典 東京大学分子細胞生物学研究所教授
2011 森 和俊 京都大学大学院理学研究科教授
山本 雅之 東北大学大学院医学系研究科長・教授
2010 河西 春郎 東京大学大学院医学系研究科教授
間野 博行 自治医科大学教授・東京大学大学院医学系研究科特任教授
2009 杉山 雄一 東京大学大学院薬学系研究科長・教授
西田 栄介 京都大学大学院生命科学研究科教授
2008 飯野 正光 東京大学大学院医学系研究科教授
山中 伸弥 京都大学物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長
2007 門脇 孝 東京大学大学院医学系研究科教授
坂口 志文 京都大学再生医科学研究所長
2006 審良 静男 大阪大学微生物病研究所教授
寒川 賢治 国立循環器病センター研究所副所長
2005 鍋島 陽一 京都大学大学院医学研究科教授
水野 美邦 順天堂大学医学部教授
2004 清水 孝雄 東京大学大学院医学系研究科教授
田中 啓二 千葉大学大学院医学研究院教授
長野 哲雄 東京大学大学院薬学系研究科教授
2002 月田 承一郎 京都大学大学院医学研究科教授
2001 成宮 周 京都大学大学院医学研究科教授
柳田 充弘 京都大学大学院生命科学研究科長・教授
2000 浅島 誠 東京大学大学院総合文化研究科教授
田中 紘一 京都大学大学院医学研究科教授
1999 宮下 保司 東京大学医学部教授
1997 長田 重一 大阪大学医学部教授
御子柴 克彦 東京大学医科学研究所教授
1996 矢﨑 義雄 東京大学医学部長・教授
1995 竹市 雅俊 京都大学大学院理学研究科教授
1994 廣川 信隆 東京大学医学部教授
1993 谷口 維紹 大阪大学細胞生体工学センター教授
本庶 佑 京都大学医学部教授・遺伝子実験施設長
1992 市原 明 徳島大学酵素科学研究センター長・教授
多田 啓也 東北大学医学部教授
永津 俊治 藤田保健衛生大学総合医科学研究所教授
1991 高久 史磨 国立病院医療センター院長
中西 重忠 京都大学医学部教授
1990 垂井 清一郎 大阪大学医学部教授
1989 大野 雅二 東京大学薬学部教授
1988 大村 智 北里研究所理事・副所長
1987 宇井 理生 東京大学薬学部教授
1986 入澤 宏 岡崎国立共同研究機構生理学研究所教授
1985 杉田 秀夫 国立武蔵療養所神経センター疾病研究第一部長
家森 幸男 島根医科大学教授






