「両立不安」を抱える人は6割 ― 男性にも広がる新たな課題 男女1,278名対象「仕事と子育ての両立に関する調査」実施・分析
スリール株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役:堀江 敦子)は、男女1,278名を対象に「仕事と子育ての両立に関する調査」を実施し、その結果をまとめた『両立不安白書2025』を2025年11月4日に公開いたします。

調査の結果、依然として6割が「仕事と子育ての両立に不安を抱えている」と回答しました。また、これまで「女性の課題」とされてきた両立不安が、男性にも広がっていることが明らかになりました。特に不安を抱えている人にはキャリア意欲の高い層も多く、また男性においては、「転職や退職を検討した」もしくは「実際に転職/退職した」人が6割に上る状況が浮き彫りとなり、性別に関係なく“両立不安”が広がっていることが明らかになりました。
※「両立不安」とは、スリールが作った造語で、仕事と子育ての両立に直面する前から不安を抱える現象。
課題提起
スリールは2010年の創業から15年、「自分らしいワーク&ライフの実現」をミッションに活動してきました。2017年には、当時まだ十分に語られていなかった“仕事と子育ての両立への漠然とした不安”に焦点を当て、初の「両立不安白書」を発行。結婚や出産前から多くの女性が不安を抱え、キャリアかプライベートかの二者択一を迫られている実態を明らかにしました。
それから8年。共働きは当たり前となり、男性の育児休業も広がり、企業の制度整備は大きく進展しました。しかし研修現場で参加者の声に耳を傾けると、依然として「復職後にかけられる期待の偏り」や「周囲の理解不足」といった、組織風土に根ざした課題が浮かび上がっています。
こうした背景を踏まえ、今回は前回調査から8年ぶりに、男女や子どもの有無を問わず、現代における“両立不安”の実態を明らかにしました。
両立不安白書2025でわかったこと
【考察1】男女ともに抱える“両立不安”
【考察2】男性の約6割が両立不安を理由に転職・退職をした、もしくは考えたことがある
【考察3】女性の2人に1人が両立不安を理由に転職・退職をした、もしくは考えたことがある
報告書は、以下よりダウンロードいただけます。
両立不安白書ダウンロードURL: https://sourire-heart.com/17196/
【考察1】男女ともに抱える“両立不安”
[結果]子どもがいる男性の57.3%、女性の72.3%が両立不安を経験。さらに子どもがいない層でも、女性の2人に1人、男性の3人に1人が不安を抱えている。
[考察]これまで「両立不安=女性の課題」とされがちでしたが、実際には男女ともに共通して抱えていることが明らかになりました。男性は「育児に十分関わりたいが仕事を減らせない」「家計を支えなければならない」といった板挟みに、女性は「体力や精神的余裕の不足」に直面しています。両立不安は性別に限定された課題ではなく、社会構造的な課題であることが浮き彫りとなりました。


【考察2】男性の約6割が両立不安を理由に転職・退職をした、もしくは考えたことがある
[結果]両立不安を抱えた子どものいる男性の66.3%が「退職・転職を考えたことがある」「実際に転職/退職した」と回答。この割合は子どもがいない男性でも56.4%に及ぶ。
[考察]民間企業での男性育休取得率は2024年度で40.5%となり、制度や環境は整いつつあります。しかし復職後に「両立できないのではないか」という不安が根強く、特に子どもを持つ男性では、中堅層・管理職候補が離職を検討する状況が見られます。この層の離職は組織の競争力低下に直結します。そのため企業には、制度整備に加えて、男性がライフイベントを迎えてもキャリアを継続できるようにする両立支援が求められます。柔軟な働き方やキャリア形成の選択肢を広げ、安心して家庭と仕事を両立できる職場文化の醸成が急務です。

【考察3】女性の2人に1人が両立不安を理由に転職・退職をした、もしくは考えたことがある
[結果]女性の2人に1人が両立不安を理由に転職・退職を考えたことがあると回答。特に子どもがいる女性では65.0%が検討し、11.5%が実際に離職。一方、子どもがいない女性でも46.3%が「考えた」経験を持ち、妊娠・出産前からキャリア継続に不安を抱えている。
[考察]女性はライフイベントを契機にキャリア継続の可否を強く意識し、特に妊娠・出産以降にキャリアを見直す動きが顕著です。こうした不安は「制度があるかどうか」だけで決まるものではなく、先輩社員が復職後にどのような仕事を任されているのか、職場の雰囲気や周囲の理解といった組織文化に大きく左右されます。企業にとって重要なのは、両立を可能にする制度整備にとどまらず、育児期を含めてキャリアを積み、活躍し続けられる支援を実現することです。復職後も責任ある仕事や成長の機会を得られる職場づくり、周囲の理解促進、そして制約があっても力を発揮できる仕組みを整えなければ、優秀な女性人材の離職リスクは高止まりしたままといえます。

男性も両立できる組織へ ―だれもが時間制約があっても活躍できる組織づくり―
今回の調査から、男性にも両立不安が存在することが明らかになりました。これまで「両立不安=女性の課題」と考えられがちでしたが、実際には男性も「家庭責任を担いたいが、仕事との両立が難しいのでは」という不安を抱えています。女性は配慮ばかりで責任ある仕事や挑戦の機会を奪われやすく、男性は逆に高負荷の業務が課され続ける。いずれの状況もキャリア形成を阻害し、このままでは優秀な人材が企業から離れてしまうリスクが高まります。
だからこそ企業に求められるのは、状況に応じて“負担と機会を調整するマネジメント”です。制度を整えるだけでは十分ではなく、心理的安全性のある環境、公平な評価制度、そして日常のマネジメントや組織風土が伴って初めて、社員は「自分の仕事は重要」「影響力を発揮できている」と実感できるようになります。
そして誰もが、時間制約があっても安心して責任ある役割を担い、やりがいや成長を伴ってキャリアを築いていける。企業が目指すべきは、「ただ働き続けられる場ではなく、男性も女性も、だれもが活躍できる組織を実現すること」です。これは女性活躍推進にとどまらず、全社員のキャリア形成を支え、企業の持続性を高めるための重要な経営課題です。

スリール株式会社 代表取締役 堀江 敦子のコメント
今回の調査で、両立不安は女性だけでなく男性にも広がり、さらにキャリア意欲の高い人材ほど強く抱えていることが明らかになりました。これは個人の努力で解決できるものではなく、社会全体で取り組むべき構造的な課題です。
制度が整っていても、“安心して使える空気”がなければ意味がありません。そして今回の分析からは、両立を支える制度に加え、“活躍支援”がそろったときにこそ社員のやりがいが最も高まることも分かりました。
両立支援と活躍支援の両輪をそろえ、安心して挑戦できる職場文化をつくることが、企業の競争力や社会の持続可能性につながると考えています。私たちは、一人ひとりが安心してキャリアを築き、家庭も大切にしながら活躍できる社会を実現していきます。
スリール株式会社 企業概要
代表 : 堀江 敦子
設立 : 2010年11月
所在地 : 〒113-0033 東京都文京区本郷三丁目30-10 本郷K&Kビル5階・6階
小野田総合法律事務所内 social hive HONGO
HP : https://sourire-heart.com/
業務内容: 企業向けコンサルティング・研修、ライフとキャリアの
デザイン教育(ワーク&ライフ・インターン運営)、
個人向けセミナー開催など