マーガリン類でゼラチンが香り成分の放出に影響することを確認 若手研究者奨励賞を受賞

2025-12-22 11:00
雪印メグミルク

雪印メグミルク株式会社(本社:東京都港区 代表取締役社長:佐藤 雅俊)は、マーガリン類のような、水が油の中に分散した乳化形態(W/O乳化物(Water-in-Oil Emulsion))では、配合したゼラチンが、香り成分の放出に影響することを明らかにしました。本研究内容を発表した「日本油化学会第63回年会」において、日本油化学会関東支部より若手研究者奨励賞を受賞し、受賞記念講演会にて講演しました。また、本研究成果は学術雑誌「Journal of Japan Oil Chemists' Society」に掲載されました。

本研究では、マーガリン類で、ゼラチンの有無がバター様の風味に重要な香り成分(脂肪酸)の放出に影響を与えることを明らかにしました。今後、得られた知見を活用して、バター様の風味を向上させた低脂肪マーガリン類の開発が期待されます。
当社は、今後も乳(ミルク)の価値の創造と、植物性の食資源の有効活用に関する取組みとを両立させ、人と自然が健やかにめぐる食の未来に貢献できる商品作りを推進してまいります。

【研究背景】
マーガリン類では、バター様の風味に近づけて嗜好性を高めるための研究開発が進められています。これまで、マヨネーズやドレッシングのような油が水の中に分散した、O/W乳化物(Oil-in-Water Emulsion)の油水界面の構造と香り成分の放出の関係は研究されていましたが、マーガリン類のような水が油の中に分散した、W/O乳化物については、十分研究が進んでいませんでした。特に、高脂肪タイプに比べて、低脂肪マーガリン類は香り成分の放出が弱く、バター様の風味の付与が難しいとされています。当社では、バター様の風味を向上させた低脂肪マーガリン類の開発を目指し、香りや味が放出されるメカニズムの研究を行っています。

【研究成果】
2種類のW/O乳化物※を対象として香り成分の分析(SPME-GC/MS)を行いました。
分析の結果、ゼラチンを含む乳化物の脂肪酸(香り成分)の放出量は、ゼラチンを含まない乳化物と比較して、大幅に減少することが分
かりました。
この現象はゼラチンとの相互作用により脂肪酸の放出が抑制されたことによると推察されます。(QCM測定)

※2種類のW/O乳化物:不飽和モノグリセリドを使用しゼラチンを含まない乳化物と、不飽和モノグリセリドを使用し、ゼラチンを含む乳化物

第13回関東支部若手研究者奨励賞記念講演会での発表

第13回関東支部若手研究者奨励賞記念講演会での発表

受賞者 当社 ミルクサイエンス研究所(受賞時)塚越 詩織

受賞者 当社 ミルクサイエンス研究所(受賞時)塚越 詩織

●乳化、乳化剤
水と油のように混ざり合わないものを、均一な状態に混合させることを「乳化」と、乳化を促進する食品添加物を「乳化剤」といいます。
乳化剤は、水になじみやすい「親水基」と油になじみやすい「親油基」の両方を有し、水と油の界面に作用して乳化を促します。

●SPME-GC/MS(Solid-Phase Microextraction–Gas Chromatography/Mass Spectrometry)
香り成分を効率よく集めて、分離・特定するための分析方法です。

●QCM(Quartz Crystal Microbalance)測定
極微少の吸着を定量する装置により、分子間の相互作用の強さを測定する方法です。

●不飽和モノグリセリド
不飽和脂肪酸が結合したモノグリセリドを指します。モノグリセリドは、グリセリン1分子と脂肪酸1分子が結合したものです。混ざりにくい水と油を、均一に混ぜるための乳化剤として用いられます。

【論文情報】
掲載誌:Journal of Japan Oil Chemists' Society
論文タイトル:Effects of Gelatin on Flavor Release at Low-Fat Spread Interface
著者:Shiori Tsukagoshi, Ai Suzuki-Iwashima, Fumina Kaneshiro, Leo Tanaka
DOI:https://doi.org/ 10.5650/jos.ess25186